糖尿病と脂肪肝(MASLD)の深い関係|代謝内科の視点から見た肝臓ケア【院長解説】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

「健診で脂肪肝を指摘されたけど、特に症状もないし放っておいて大丈夫?」「糖尿病だと言われたけど、肝臓まで一緒に診てもらう必要はあるの?」——田園調布の地域の患者さまから、こうしたご質問を本当に多くいただきます。

結論から申し上げると、糖尿病と脂肪肝(MASLD:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)は「両輪」のように密接につながっており、どちらか片方だけ治療してももう一方が悪化する関係にあります。本記事では、日本消化器病学会・日本肝臓学会の「MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)」に基づき、糖尿病と脂肪肝の関係、最新の治療動向、そして当院でできる対応について解説いたします。

2026年4月より、医療法人社団五良会の姉妹院・五良会クリニック白金高輪 院長の玉井博修医師(日本肝臓学会 専門医・指導医)が、毎週火曜午前・水曜終日に当院の消化器内科外来を担当しております。糖尿病内科を院長(私)が、肝臓専門外来を玉井医師が連携して担当することで、田園調布でも代謝と肝臓を一体的に診る体制を整えました。

MASLD(マッスルディー)とは—NAFLDからの呼称変更

これまで「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」と呼ばれてきた病気は、2023年6月の欧州肝臓学会(EASL)、米国肝臓病学会(AASLD)、ラテンアメリカ肝疾患研究協会(ALEH)の合同声明を受けて、世界的に名称が変更されました。日本でも2024年8月に日本消化器病学会・日本肝臓学会が日本語病名を正式決定しています。

旧名称 新名称 日本語病名
NAFLD MASLD 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患
NASH MASH 代謝機能障害関連脂肪肝炎
(新分類) MetALD 代謝機能障害アルコール関連肝疾患

名称変更の最大のポイントは、「非アルコール性(non-alcoholic)」という「○○ではない」病名から、「代謝機能障害(metabolic dysfunction)」という積極的な定義に変わったことです。これは「脂肪肝を全身の代謝疾患(メタボリックシンドローム)の一部として捉える」という、現代医学の視点を反映したものです。

ポイント|MASLDの診断基準

画像検査などで「脂肪肝」と確認されたうえで、以下の心代謝系リスク因子の1つ以上を満たすこと:

① BMI 25以上(日本基準)、またはウエスト周囲径 男性85cm/女性90cm以上

② 空腹時血糖 100以上、HbA1c 5.7%以上、または糖尿病の治療中

③ 血圧 130/85以上、または高血圧治療中

④ 中性脂肪 150以上、または脂質異常症治療中

⑤ HDLコレステロール 男性40未満/女性50未満

つまり、「脂肪肝+メタボの要素1つでもあればMASLD」です。日本では成人の約3割がMASLDに該当すると推計されており、決して稀な病気ではありません。

糖尿病とMASLDが連動して悪化する仕組み

2型糖尿病の方の約55〜70%にMASLDが合併すると報告されています(MASLD診療ガイドライン2026)。これは偶然ではなく、両者が同じ「インスリン抵抗性」という基盤を共有しているためです。

メカニズム図解|糖尿病とMASLDの「負のスパイラル」

1 内臓脂肪の蓄積:余分なエネルギーが内臓脂肪として蓄積される。
2 インスリン抵抗性の発生:内臓脂肪から放出される炎症性物質が、インスリンの効きを悪くする。
3 肝臓への脂肪沈着(MASLD):行き場を失った脂肪が肝細胞に蓄積される。
4 肝臓の糖代謝が悪化:脂肪肝になった肝臓はインスリン抵抗性をさらに高め、空腹時血糖値が上昇。
5 2型糖尿病の発症・悪化:MASLDがある人の2型糖尿病発症リスクは約2倍、また糖尿病があると肝線維化の進行リスクも高まる。

この「糖尿病 ⇄ MASLD」のスパイラルは、片方だけ治療しても断ち切れません。代謝内科(糖尿病)と肝臓専門(MASLD)の両方の視点を持って、同時に治療する必要があります。

どこまで進むと危険?—MASH・肝硬変・肝細胞がんへの道筋

MASLD全体のうち、約20〜30%がMASH(炎症と肝細胞障害を伴うタイプ)に進行します。MASHはさらに数年〜数十年かけて肝線維化を進め、一部の方は肝硬変・肝細胞がんへと至ります。

段階 特徴 介入の余地
単純性脂肪肝(MASL) 脂肪沈着のみ、炎症なし 生活改善で十分に可逆
MASH(炎症あり) 炎症+肝細胞障害 生活改善+薬物療法で改善可能
肝線維化(進行性) 線維化が進行 専門医での集中管理
肝硬変・肝細胞がん 機能不全・がん発症 不可逆—予防が最重要

MASLDから肝硬変まで進む方は全体の数%ですが、糖尿病を併発している方ではこのリスクが2〜3倍に高まることが分かっています。「無症状だから大丈夫」ではなく、糖尿病をお持ちの方は年に1回は肝臓の評価を受けることが推奨されます。

セルフチェック—Fib-4 indexで線維化リスクを推定

肝線維化のリスクを血液検査の数値だけで推定できる「Fib-4 index」という指標があります。日本肝臓学会の「奈良宣言2023」でも、MASLDのスクリーニングに広く推奨されています。

Fib-4 index の計算式と判定

Fib-4 index = 年齢 × AST ÷ (血小板数 × √ALT)

(血小板は10⁹/L 単位、AST/ALTはU/L)

1.30未満:線維化リスク低 → 経過観察

1.30〜2.67:中間(特に65歳未満で2.0超は要精査)

2.67以上:線維化進行リスク高 → 肝臓専門医へ紹介

当院では健診結果をお持ちいただければ、その場でFib-4 indexを計算し、必要に応じて腹部超音波検査(脂肪肝のグレード評価)や、玉井博修医師(日本肝臓学会 専門医・指導医)への院内紹介をスムーズに行います。

2026年現在の治療—生活習慣・薬物療法・新規治療薬

① 生活習慣改善(最も強いエビデンス)

MASLD治療の第一選択は、現在も体重の5〜10%減量です。これだけで脂肪肝が改善し、MASHの炎症・線維化まで改善する可能性があるとされています。

エビデンスに基づく食事・運動の目安

地中海食(オリーブ油・魚・野菜・全粒穀物中心)が脂肪肝改善に有効

果糖(清涼飲料水)と精製炭水化物の制限

有酸素運動:週150分以上(早歩き・水泳・自転車など)

筋トレ:週2回以上でインスリン感受性を改善

コーヒー(無糖):1日2〜3杯で肝線維化リスク低下の報告あり

食事改善の具体的な実践方法については、院長著書を起点とした『あぶら落とすスープ』で始める食生活改善の記事もぜひご活用ください。

② 糖尿病合併例での薬物療法

2型糖尿病とMASLDを併発している場合、GLP-1受容体作動薬(セマグルチドなど)やSGLT2阻害薬が、血糖改善に加えて肝脂肪・体重・心血管イベントの改善に有効であることが大規模試験で示されています。

薬剤 作用 MASLDへの効果
GLP-1受容体作動薬 食欲抑制・体重減少・血糖低下 ○ 肝脂肪・MASH改善のエビデンスあり
SGLT2阻害薬 尿糖排泄・体重減少・心腎保護 ○ 肝脂肪改善・心血管イベント抑制
ピオグリタゾン インスリン抵抗性改善 ○ MASH組織所見の改善
チルゼパチド(GIP/GLP-1) 体重減少効果が特に強い ◎ MASH消失59%、線維化改善54%(Phase2試験)

注意|薬剤は適応・保険適用に違いがあります

上記の薬剤はいずれも「糖尿病治療」が保険適用であり、肥満症やMASLD単独に対しては適応・保険適用が限られます。一部薬剤は2024年以降に肥満症への保険適用が拡大されていますが、患者さまの病態によって処方の可否を慎重に判断する必要があります。詳細は当院でご相談ください。

竹内+白金高輪の連携で実現する代謝×肝臓ケア

糖尿病とMASLDは、片方を診ているだけでは十分な治療が難しい病気です。五良会グループでは、両院の特性を活かした分業体制でご対応いたします。

役割 竹内内科小児科医院(田園調布) 五良会クリニック白金高輪(港区)
糖尿病・代謝内科 ○ 院長(五藤)担当 ○ 担当医あり
肝臓専門外来(MASLD/MASH) ○ 玉井医師 火曜午前・水曜終日 ○ 玉井医師 各曜日
腹部超音波(脂肪肝評価) ○ 対応可 ○ 対応可
肝硬度測定・Fibroscan – (連携で対応) ◎ 専門評価
栄養指導外来 ◎ 管理栄養士による個別指導 ○ 対応可

よくあるご質問

Q1. お酒を全く飲まないのに「脂肪肝」と言われました。なぜですか?

MASLDの主な原因は食べ過ぎ・運動不足・肥満・インスリン抵抗性であり、お酒とは無関係でも発症します。むしろ「お酒を飲まない=肝臓が健康」という思い込みが、発見を遅らせる原因になります。

Q2. 糖尿病薬を変えれば、脂肪肝も良くなりますか?

GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬への切り替えで、血糖と肝脂肪の両方が改善する症例は実際に多くいらっしゃいます。ただし薬の選択は腎機能・心機能・体格・年齢など総合的に判断しますので、当院の糖尿病内科でご相談ください。

Q3. 体重を5%減らすのは目標として現実的ですか?

体重70kgの方なら3.5kgです。半年〜1年かけてゆっくり減量するペースが安全であり、達成可能な目標です。栄養指導外来でリバウンドしにくい食事プランをご一緒に考えていきます。

Q4. 肝硬度測定(Fibroscan)はいつ受けるべきですか?

Fib-4 indexが2.67以上の方、糖尿病合併で5年以上経過観察中の方、肝臓内に結節が疑われる方は、姉妹院・五良会クリニック白金高輪でのFibroscan評価をお勧めしています。竹内からの連携予約でスムーズにご受診いただけます。

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玉井博修 院長 プロフィール
日本肝臓学会 専門医・指導医

五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪が連携し、糖尿病と肝臓を多角的にサポートしております。「糖尿病だけ」「脂肪肝だけ」ではなく、両方を一体で診ることで、合併症のリスクを下げ、長く健康に過ごしていただける土台をご一緒に作ってまいります。

参考文献

  1. 日本消化器病学会・日本肝臓学会 編. MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版). 南江堂.
  2. 日本消化器病学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」(2024年8月20日公表).
  3. 日本肝臓学会「奈良宣言2023」.
  4. 日本糖尿病学会 編. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂.
  5. Loomba R, et al. Tirzepatide for Metabolic Dysfunction–Associated Steatohepatitis with Liver Fibrosis. N Engl J Med. 2024;391:299-310(SYNERGY-NASH試験).
  6. Newsome PN, et al. A Placebo-Controlled Trial of Semaglutide in NASH. N Engl J Med. 2021;384:1113-1124.
  7. EASL–EASD–EASO Clinical Practice Guidelines on the management of MASLD. J Hepatol. 2024.

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