2026年に入り、日本各地で麻疹(はしか)の患者報告が急増しています。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の速報では今年の全国累計報告数は3月11日時点で100例に達し、東京都だけでも3月12日時点で27例が確認されました。
一方で、麻疹予防に必要なMRワクチンおよびおたふくかぜワクチンの供給が全国的に逼迫しています。本記事では、麻疹の基本知識・感染リスクが高い世代・免疫確認の方法・ワクチン供給の現状・当院で受けられる対応についてまとめてお伝えします。
目次
2026年の麻疹流行状況
JIHSの感染症発生動向調査(IDWR)によると、2026年第10週(3月11日現在)の全国麻疹累積報告数は100例(速報値)に達しました。東京・関東圏のほか、東北・東海・近畿など日本各地で患者が確認されています。
現在の流行状況(2026年3月時点)
- 全国累積報告数:100例(2026年第10週・3月11日時点)
- 東京都:3月12日時点で27例確認。2009年以降で最多ペースとなる可能性
- 愛知県東三河地域の高校で2月に集団感染(7例)が発生
- 千葉県・群馬県・大阪府でも散発的な患者報告が継続
- 海外渡航歴のない国内感染事例も複数確認されている
- 厚生労働省は2026年2月13日、「麻しん発生報告数増加に伴う注意喚起」を発出
世界的にも状況は深刻で、アメリカでは2025年の年間感染者数が麻疹排除宣言(2000年)以降で最多となり、ワクチン未接種の小児を含む死亡例も報告されました。カナダは2025年11月、27年間維持してきた麻疹排除認定を喪失しています。「先進国だから安全」という認識は、もはや通用しません。
麻疹(はしか)とはどんな病気?
麻疹の基本情報
- 病原体:麻疹ウイルス(パラミクソウイルス科)
- 感染経路:空気感染・飛沫感染・接触感染(すべての経路で伝播)
- 潜伏期:約10〜12日間
- 感染力:1人の患者から12〜18人に拡大(インフルエンザは1〜3人)
- 発症率:免疫のない人が接触するとほぼ90〜100%が発症
- 有効な治療薬:なし(対症療法のみ)
典型的な麻疹の経過
| STEP 1 潜伏期 |
感染後10〜12日。症状なし。 |
| STEP 2 カタル期 |
発熱(38℃前後)・咳・鼻水・結膜炎など風邪に似た症状が2〜4日続く。口の中の頬粘膜に「コプリック斑」(白い小点)が出現するのが特徴。この時期が最も感染力が強い。 |
| STEP 3 発疹期 |
いったん解熱後、39〜40℃以上の高熱が再燃。耳の後ろから全身に広がる赤い発疹が出現し、約5日間続く。 |
| STEP 4 回復期 |
発疹が色素沈着を残して消退し、解熱へ。体力の回復には時間がかかる。 |
「たかが発疹」では済まない合併症
- 肺炎・中耳炎:最も多い合併症
- 脳炎:患者1,000人に1人の割合で発症。後遺症が残ることがある
- 死亡:先進国でも1,000人に1人と報告されている
- 亜急性硬化性全脳炎(SSPE):感染数年〜10年後に発症する重篤な脳疾患(治療法なし)
- 免疫健忘:麻疹ウイルスは免疫記憶細胞を破壊し、過去に得た他の感染症免疫まで消去することがある
感染リスクが高い世代は?
日本の麻疹ワクチン接種は年代によって接種回数が大きく異なります。2回接種が徹底されていない世代では免疫が不十分な方が存在し、また幼少期に接種した方でも経年とともに抗体価が低下していることがあります。
生年別の接種状況とリスク
| 生年 | 接種状況 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 2000年4月2日以降生まれ | 2回定期接種(1期・2期)が標準 | 接種記録を確認。2回接種済みであれば基本的に問題なし |
| 1990年4月2日〜 2000年4月1日生まれ (現在25〜35歳) |
1回のみの方が多い世代。2回目が不完全な場合も | 抗体検査または追加接種(1回)を推奨 |
| 1979年4月2日〜 1990年4月1日生まれ (現在35〜46歳) |
1回接種のみまたは未接種が多い世代 | 抗体検査を受け、必要であれば接種を強く推奨 |
| 1979年4月1日以前生まれ | 自然感染により免疫を持っている可能性が高い | 不安な方は抗体検査で確認可能 |
「子どものころに打ったはず」という方でも、1回接種のみであれば不十分な可能性があります。海外渡航の予定がある方、妊婦・乳幼児と接する方、医療従事者の方は特にご注意ください。
麻疹の免疫確認:麻疹IgG(EIA法)
現在、麻疹の免疫状態を確認する検査として最も普及しているのが麻疹IgG抗体検査(EIA法)です。採血によって麻疹ウイルスに対するIgG抗体の量を測定し、感染予防に足る免疫があるかどうかを調べます。
麻疹IgG(EIA法)の判定基準
| EIA価(IgG) | 判定 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 16.0以上 | 基準を満たす陽性 | 十分な免疫あり。通常は接種不要 |
| 2.0〜15.9 | 基準未満の陽性 | 抗体はあるが不十分。ワクチン1回接種を検討 |
| 2.0未満 | 陰性 | 免疫なし。ワクチン2回接種を推奨(最低27日間隔) |
※日本環境感染学会「医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版」の基準値に基づく。
結果は約5〜7日で判明します。ワクチン2回接種済みが母子手帳で確認できる方は、抗体価にかかわらず追加接種が不要な場合もあります。まずはお気軽にご相談ください。
当院の麻疹IgG抗体検査(EIA法)
3,500円(税込)
MRワクチン・おたふくかぜワクチンの供給逼迫
麻疹の流行拡大が懸念されるなか、ワクチン接種を急ごうとしても、肝心のワクチンが手に入らないという深刻な問題が生じています。
なぜ供給が逼迫しているのか
MRワクチン(麻疹・風疹混合)
国内では武田薬品工業・第一三共・阪大微生物病研究会の3社がMRワクチンを製造・販売しています。2024年1月、武田薬品のMRワクチンに麻疹ウイルス力価が有効期間内に承認規格を下回るロットが確認されたことから自主回収が実施されました。これを受け、他の2社製品も限定出荷(出荷調整)となり、全国的な供給不足が続きました。厚生労働省は定期接種の対象期間内に接種できなかった方への特例措置として接種期間の2年間延長を決定(2027年3月31日まで)しており、供給不足の深刻さを物語っています。
参考:厚生労働省「ワクチンの供給状況について」/国立健康危機管理研究機構 IASR Vol.46
おたふくかぜワクチン(ムンプスワクチン)
国内で流通するおたふくかぜワクチンは「乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン『タケダ』」と「おたふくかぜ生ワクチン『第一三共』」の2種類のみです。このうち武田薬品のワクチンが2025年8月から出荷停止となり(2025年11月にも続報あり)、2026年1月15日に出荷再開予定が発表されたものの、1社だけでは需要に対応しきれない状況が続いています。「発注しても直ちに納品されない」状態が各医療機関で報告されており、接種を希望しても待機が必要なケースが生じています。
参考:武田薬品工業「ワクチンに関する重要なお知らせ」(2025/11/17・2026/01/15)
流行中にワクチンが手に入らないリスク
麻疹が流行し、接種を急ぎたい方が増えるほど、国産ワクチンへの需要がさらに集中します。「流行が心配だからワクチンを打ちたい」と思ったときには、すでに在庫切れや順番待ちが発生していることも考えられます。今できるうちに、早めに対応することが大切です。
輸入MMR-IIワクチンという選択肢
国産MRワクチンとおたふくかぜワクチンの供給が不安定ななか、当院では輸入ワクチン「MMR-II」(MSD社製)を取り扱っています。
MMR-IIワクチンの特徴
| 対象疾患 | 麻疹(Measles)・おたふくかぜ(Mumps)・風疹(Rubella) の3疾患を1本のワクチンで同時予防 |
| 使用国 | アメリカをはじめ世界100か国以上で広く使用されている |
| 予防効果(2回接種時) | 麻疹 約97%・おたふくかぜ 約88%・風疹 約97% |
| 持続効果 | 適切な2回接種で10〜20年以上にわたる効果が期待される |
| 副反応 | 発熱・接種部位の腫れ・一時的な発疹など(通常は軽微・一過性) |
MMR-IIを選ぶメリット
- 1本で3疾患をカバー — MRワクチン+おたふくかぜワクチンを別々に接種する必要がなく、来院回数を最大1回減らせる
- 国産ワクチンの供給不足の影響を受けにくい — MRワクチン・おたふくかぜワクチンの在庫状況に左右されない
- おたふくかぜも同時に対策できる — 難聴・精巣炎・髄膜炎などの重篤な合併症があるおたふくかぜも一緒に予防できる
MMR-IIに関する注意事項
- 輸入ワクチンのため、医薬品副作用被害救済制度(PMDA)の対象外となります(輸入ワクチン副作用被害者補償制度の対象となります)
- 妊娠中の方・免疫不全の方・ゼラチンアレルギーの方は接種できません
- 接種後2か月間は妊娠を避けてください
- 接種前に医師による診察を行います
当院での料金・対応
竹内内科小児科医院では、麻疹の抗体検査から各種ワクチン接種まで一貫して対応しています。
当院の検査・ワクチン費用(自由診療・税込)
| 項目 | 内容 | 費用(税込) |
|---|---|---|
| 麻疹IgG抗体検査(EIA法) | 採血。結果は約5〜7日。麻疹の免疫状態を確認 | 3,500円 |
| MRワクチン(麻疹・風疹混合・国産) | 麻疹・風疹を予防。任意接種 | 10,000円 |
| おたふくかぜワクチン(国産・単独) | ムンプスを予防。任意接種。在庫状況はお問い合わせください | 8,000円 |
| 輸入MMR-IIワクチン (麻疹・おたふくかぜ・風疹 3種混合) |
1本で3疾患を同時予防。MRワクチンとおたふくかぜワクチンの2本を別々に打つ手間が省ける。国産ワクチンの供給不足の影響を受けにくい | 15,000円 |
※いずれも任意接種(自由診療)です。定期接種対象者(1期・2期・第5期)は別途定期接種として無料で接種できる場合があります。詳しくは当院スタッフまでご確認ください。
こんな方はご相談ください
- 自分や子どもの麻疹の免疫状態が不安な方
- 母子手帳が見つからず、接種歴が不明な方
- 海外渡航前に麻疹・おたふくかぜ・風疹の免疫を確認・補強したい方
- MRワクチンとおたふくかぜワクチンをまとめて効率よく接種したい方
- 妊娠を考えており、風疹・麻疹の免疫を確認したい方
- 小さなお子さんがいるご家族で、周囲の大人の免疫が心配な方
麻疹は有効な治療薬がなく、予防が唯一の対策です。流行が続いている今こそ、ご自身とご家族の免疫状態を見直してください。
・国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症発生動向調査(IDWR)2026年第10週速報(2026年3月11日)
・東京都感染症情報センター「麻しんの流行状況(東京都 2026年)」(2026年3月12日時点)
・厚生労働省「麻しんの国内外での報告増加に伴う注意喚起について」(2026年2月13日)
・厚生労働省「ワクチンの供給状況について」(2025年12月16日更新)
・国立健康危機管理研究機構 IASR Vol.46「麻しん含有ワクチンの定期接種と供給状況について」
・武田薬品工業「ワクチンに関する重要なお知らせ」(おたふくかぜワクチン出荷停止・2025/11/17、出荷再開予定・2026/01/15)
・日本環境感染学会「医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版」
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院長 五藤良将