プラセンタ注射は、美容クリニックだけでなく、内科・婦人科でも広く使われている医療行為です。「疲れが取れない」「肌のハリがなくなってきた」「更年期の症状がつらい」——そんなお悩みをお持ちの方に、医学的な視点からプラセンタ注射について詳しく解説します。
目次
- プラセンタとは何か?——胎盤の医学的な役割
- プラセンタ注射の作用機序——なぜ効果があるのか
- メルスモンとラエンネックの違い
- 保険適用と自費診療の条件
- 期待できる効果と科学的エビデンス
- 副作用とリスク——献血制限について
- 当院での治療の流れ
1. プラセンタとは何か?——胎盤の医学的な役割
プラセンタ(Placenta)とは「胎盤」のことです。胎盤は妊娠中にのみ形成される臨時の臓器であり、母体と胎児をつなぐ重要な役割を担っています。
胎盤の主な働き
(1)栄養・酸素の供給
母体の血液から栄養素と酸素を胎児に届けます
(2)老廃物の排出
胎児の代謝産物を母体へ戻し、排出を助けます
(3)免疫バリア機能
有害物質から胎児を守る防御壁として機能します
(4)ホルモン産生
妊娠維持に必要な各種ホルモンを分泌します
このように胎盤には、新しい生命を育てるための豊富な栄養成分や成長因子が凝縮されています。医療用プラセンタ製剤は、この胎盤から有効成分を抽出・精製したものです。
2. プラセンタ注射の作用機序——なぜ効果があるのか
プラセンタには、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、核酸、活性ペプチド、酵素、成長因子など、多種多様な生理活性物質が含まれています。
プラセンタに含まれる主な有効成分
| アミノ酸(20種類以上) | 細胞の原料となり、新陳代謝を促進 |
| 成長因子(HGF、EGF、FGFなど) | 細胞の再生・修復を促進 |
| ビタミン・ミネラル | 代謝酵素の補酵素として機能 |
| 核酸(DNA、RNA) | 遺伝情報の修復、細胞分裂の促進 |
ポイント:プラセンタの多面的な薬理作用
プラセンタは単一成分の薬剤ではなく、複数の生理活性物質が総合的に作用することで効果を発揮します。これを「組織療法」と呼び、1930年代に旧ソ連のフィラートフ博士によって確立された治療概念です。特定の成分だけでなく、胎盤に含まれる成分の「総合力」が自然治癒力を高めると考えられています。
3. メルスモンとラエンネックの違い
現在、日本国内で厚生労働省により医薬品として認可されているヒトプラセンタ注射剤は、メルスモンとラエンネックの2種類のみです。
| 項目 | メルスモン | ラエンネック |
|---|---|---|
| 発売年 | 1956年 | 1974年 |
| 製造元 | メルスモン製薬 | 日本生物製剤 |
| 製法 | 加水分解法 (強酸で細胞膜を分解) |
分子分画法 (特殊フィルターで抽出) |
| 1本あたり胎盤含有量 | 100mg/2mL | 112mg/2mL (約10%多い) |
| 保険適用疾患 | 更年期障害 乳汁分泌不全 |
慢性肝疾患 (肝硬変・慢性肝炎) |
| 投与方法 | 皮下注射のみ | 皮下注射・筋肉注射 |
| 添加物 | ベンジルアルコール (局所麻酔作用あり) |
pH調整剤、ペプシン、乳糖 |
| 注射時の痛み | 少ない (麻酔成分入り) |
やや強い (酸性度が高い) |
アレルギーや副作用が出た場合の対応
体質によっては添加物に対してアレルギー反応を起こす方がいます。痒みや発疹が出現した場合は、もう一方の薬剤へ変更することで改善することがあります。
ラエンネックで頭痛が起きる場合 → メルスモンへ変更
メルスモンで眠気が強い場合 → ラエンネックへ変更
4. 保険適用と自費診療の条件
保険適用となる場合
【メルスモン】更年期障害
- 対象年齢:45歳から59歳の女性
- 更年期症状(ほてり、のぼせ、イライラ、不眠、倦怠感など)がある方
- 診察により更年期障害と診断された場合
【メルスモン】乳汁分泌不全
- 産後1年以内で母乳の分泌が不十分な方
【ラエンネック】慢性肝疾患
- 慢性肝炎、肝硬変などの肝機能障害がある方
- 血液検査で肝機能異常が確認された場合
自費診療となる場合
- 美容目的(美肌、アンチエイジング)
- 疲労回復、体力増強目的
- 45歳未満または60歳以上の更年期様症状
- 男性更年期障害(LOH症候群)
- 自律神経失調症状の改善
- アレルギー体質の改善
5. 期待できる効果と科学的エビデンス
プラセンタ注射には多くの効果が報告されていますが、医学的なエビデンスのレベルは効果によって異なります。
効果とエビデンスレベル
厚生労働省が効能として承認している効果
- 更年期障害の諸症状改善(メルスモン)
- 乳汁分泌不全の改善(メルスモン)
- 慢性肝疾患における肝機能の改善(ラエンネック)
臨床で広く報告されている効果
- 疲労回復、倦怠感の軽減
- 肌質改善(ハリ、ツヤ、くすみ改善)
- 自律神経の調整作用
- 免疫力の調整
- ホルモンバランスの調整
個人差が大きい効果(経験的に報告されるもの)
- シミ・シワの改善
- アレルギー症状の軽減
- 冷え性の改善
- 不眠の改善
医師からの補足
プラセンタの効果には個人差があります。「この成分が効いている」という単一の有効成分は現時点では特定されておらず、複数の成分が総合的に作用していると考えられています。効果を実感されている方も多い一方で、明確なエビデンスまでは確立されていない効果もあることをご理解ください。
6. 副作用とリスク——献血制限について
プラセンタ注射は比較的安全性の高い治療ですが、いくつかの副作用とリスクについて知っておく必要があります。
報告されている副作用
比較的よくみられる症状(5%程度)
- 注射部位の疼痛、発赤、腫れ
- 内出血(あざ)
まれにみられる症状(0.1から5%未満)
- 悪寒、悪心、発熱
- 発疹、かゆみ
- 頭痛(主にラエンネック)
- 眠気、だるさ(主にメルスモン)
※これらの症状は通常一時的なもので、数日以内に改善します。
重要:献血・臓器提供について
プラセンタ注射を一度でも受けると、生涯にわたって献血ができなくなります。
これは、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の感染リスクを理論的に完全には否定できないためです。平成18年(2006年)に厚生労働省より通達が出されています。
ただし:
- これまでにプラセンタ注射による感染症の報告は国内外で一例もありません
- 製造工程で高圧滅菌、酸素処理などウイルス不活化処理が施されています
- 原料となる胎盤は厳格なスクリーニング検査を通過したもののみ使用
臓器提供については、移植を受ける方がリスクの説明を受けた上で同意した場合に限り可能です。
7. 当院での治療の流れ
プラセンタ注射の流れ
STEP 1:問診・診察
現在の症状、既往歴、アレルギーの有無などを確認します。献血制限について同意書にご署名いただきます。
STEP 2:注射
皮下注射または筋肉注射で投与します。所要時間は5分程度です。
STEP 3:経過観察
初回は10から15分程度院内でお過ごしいただき、異常がないことを確認します。
推奨される接種頻度
初期(効果を実感するまで)
週1から2回、2から4週間継続
維持期(効果を維持したい方)
週1回から2週に1回程度
※効果には個人差があります。医師と相談しながら、ご自身に合った頻度を見つけていきましょう。
この記事のまとめ
- プラセンタ注射にはメルスモンとラエンネックの2種類があり、保険適用疾患が異なる
- 更年期障害(45から59歳女性)ではメルスモンが保険適用
- メルスモンは痛みが少なく、ラエンネックは有効成分がやや多い
- 効果には個人差があり、週1から2回の継続で実感される方が多い
- 一度でも接種すると生涯献血ができなくなることを理解した上で治療を受ける
プラセンタ注射をお考えの方へ
「疲れやすい」「肌の調子が悪い」「更年期の症状がつらい」——そんなお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
当院では、患者さまのお悩みや体質に合わせて、メルスモンとラエンネックを使い分けて治療を行っております。
TAKEUCHI CLINIC
竹内内科小児科医院
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