「食べたもので、からだはつくられる」 ── この言葉は、古来より東洋医学が説いてきた「医食同源」の理念そのものです。
私たちの血液も、骨も、筋肉も、ホルモンも、すべては口から摂取した栄養素を原料として日々つくり替えられています。つまり、食事の質は、そのまま「からだの質」に直結するのです。
竹内内科小児科医院では、糖尿病内科・生活習慣病診療の一環として、管理栄養士による「栄養指導外来」を開設しております。肥満、糖尿病、高血圧症、脂質異常症はもちろん、小児科を併設する当院ならではの離乳食相談まで、食にまつわる幅広いお悩みに対応しています。

この記事の内容
1. 医食同源 ── 食べるものが「からだ」をつくる科学的根拠
2. 生活習慣病と代謝疾患 ── なぜ食事療法が「最初の処方」なのか
1. 医食同源 ── 食べるものが「からだ」をつくる科学的根拠
ヒトの体は約37兆個の細胞で構成されており、その大部分は数か月から数年のサイクルで新しい細胞に置き換わっています。赤血球は約120日、腸の上皮細胞は3〜5日、皮膚は約28日で新陳代謝を繰り返します。この「細胞の入れ替え」の原材料となるのが、まさに私たちが毎日口にしている食事です。
たとえば、タンパク質はアミノ酸に分解され、筋肉・酵素・ホルモン・免疫抗体の材料となります。脂質は細胞膜の構成成分であり、神経伝達にも不可欠です。炭水化物はブドウ糖として脳や筋肉のエネルギー源となりますが、過剰に摂取すれば中性脂肪として蓄積され、動脈硬化の引き金になります。
栄養素と体の関係
三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)に加え、ビタミン・ミネラル・食物繊維・フィトケミカル(植物性化学物質)がそれぞれ代謝経路の中で重要な役割を果たしています。特にビタミンB群はTCA回路(クエン酸回路)における補酵素として、マグネシウムは300以上の酵素反応に関与しており、これらが不足すると代謝効率が低下し、倦怠感や肥満の一因となります。
中国の古典には「薬食同源」という言葉があり、日本ではこれが「医食同源」として広く知られるようになりました。食事は単なる空腹を満たす行為ではなく、病気の予防と治療の最も基本的な手段なのです。
2. 生活習慣病と代謝疾患 ── なぜ食事療法が「最初の処方」なのか
糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満 ── これらは「生活習慣病」と総称されますが、医学的には代謝疾患(metabolic diseases)としての側面が極めて重要です。いずれも、エネルギーや栄養素の「入口」と「出口」のバランスが崩れることで発症・進行する疾患であり、食事はまさにその「入口」にあたります。
糖尿病と食事の関係
2型糖尿病は、インスリン分泌能の低下とインスリン抵抗性の増大が複合的に作用して発症します。日本人は欧米人に比べてインスリン分泌能が低い傾向にあり、軽度の肥満でもインスリン抵抗性が顕著になりやすいことが知られています。食後血糖値の急激な上昇(グルコーススパイク)は、膵臓のβ細胞に過大な負荷をかけ、長期的にはβ細胞の疲弊・アポトーシスを招きます。
糖尿病進行のメカニズム
1過食・高GI食による食後高血糖(グルコーススパイク)
2膵臓β細胞への過剰な刺激 → インスリン大量分泌
3内臓脂肪蓄積 → アディポサイトカインの異常分泌 → インスリン抵抗性の増大
4β細胞の疲弊 → インスリン分泌低下 → 慢性高血糖の持続
5糖尿病合併症(網膜症・腎症・神経障害・動脈硬化)へ進展
この悪循環を断ち切る最も根本的な介入が食事療法です。適切な栄養バランス、食物繊維の十分な摂取、低GI食品の選択、そして適正エネルギー量の維持は、薬物療法と同等かそれ以上の効果をもたらします。
高血圧と食塩・カリウム
高血圧症における食事療法の柱は「減塩」です。日本高血圧学会は1日6g未満を推奨していますが、日本人の平均食塩摂取量は約10gと依然として高い水準にあります。食塩(NaCl)の過剰摂取は、ナトリウム再吸収の亢進を通じて循環血液量を増加させ、血圧を上昇させます。一方で、カリウムはナトリウムの尿中排泄を促進する作用があり、野菜・果物・海藻類の積極的な摂取が推奨されます。
脂質異常症とコレステロール代謝
LDLコレステロール(悪玉)の上昇は、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取と強く関連します。逆に、n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA・DHA)は中性脂肪を低下させ、動脈硬化を抑制することがJELIS(Japan EPA Lipid Intervention Study)などの大規模臨床試験で実証されています。食物繊維(特に水溶性食物繊維)は、腸管でのコレステロール吸収を抑制する効果もあります。
3. DPP研究が証明した「食事と運動」の圧倒的な力
「生活習慣を変えるだけで、本当に病気を予防できるのか?」 ── この問いに対して、最も強力なエビデンスを示したのが米国のDiabetes Prevention Program(DPP)です。
DPP研究の概要(NEJM 2002; Diabetes Care 2002)
対象:3,234名の耐糖能異常(IGT)を有する成人(BMI 24以上、平均年齢50.6歳)
介入:生活習慣介入群(体重7%減量+週150分の中等度運動)、メトホルミン群、プラセボ群の3群比較
結果:生活習慣介入群は、プラセボ群と比較して2型糖尿病の発症を58%抑制。60歳以上のサブグループでは71%もの抑制が達成された。メトホルミン群でも31%の抑制効果が認められた。
長期追跡(DPPOS 22年間):生活習慣介入群では25%、メトホルミン群では18%の糖尿病発症リスク低下が持続。糖尿病を発症しなかった群では、糖尿病網膜症が57%、腎症が37%、主要心血管イベントが39%少ないことが確認された。
このDPP研究の衝撃的な点は、薬物(メトホルミン)よりも食事・運動という生活習慣介入のほうが、約2倍の効果を示したことです。しかもその効果は22年以上にわたって持続しています。
DPPの生活習慣介入プログラムで特に重視されたのは、脂肪からのカロリー摂取を総カロリーの25%未満に抑えること、食事記録(セルフモニタリング)の習慣化、そして管理栄養士による個別コーチングでした。「何を食べるか」だけでなく「食べ方を意識する」ことが、糖尿病予防のカギであることを科学的に示した画期的な研究です。
フィンランド糖尿病予防研究(DPS)・大慶研究(Da Qing Study)
DPP以前にも、フィンランドのDPS(2001年)では生活習慣介入で糖尿病発症が58%抑制され、中国の大慶研究(1997年)では食事・運動・食事+運動の各群で31〜46%の抑制効果が報告されています。国際的に、人種や地域を問わず、食事と運動による糖尿病予防効果は再現性をもって確認されているのです。
4. 発酵食品と腸内環境 ── 日本の伝統食に宿る知恵
近年、腸内細菌叢(腸内フローラ)と全身の代謝疾患との関連が急速に明らかになっています。腸管には免疫細胞の約60〜70%が集中しており、「腸は最大の免疫臓器」とも呼ばれます。腸内フローラの多様性が低下すると、慢性炎症が持続し、インスリン抵抗性の増大、肥満、動脈硬化の促進につながることが示されています。
NHK Eテレ『趣味どきっ!』でも取り上げられた糠漬けや味噌・納豆などの発酵食品は、乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスを豊富に含むだけでなく、発酵過程で生成される短鎖脂肪酸の前駆物質を含むプレバイオティクスとしての機能も併せ持っています。
発酵食品の主な健康効果
短鎖脂肪酸(酪酸・プロピオン酸・酢酸)の産生促進:腸管上皮のバリア機能強化、GLP-1分泌促進によるインスリン分泌改善、抗炎症作用
免疫調節作用:制御性T細胞(Treg)の誘導、Th1/Th2バランスの是正によるアレルギー・自己免疫疾患の抑制
ビタミンK2の合成:納豆菌によるメナキノン-7の産生は骨代謝改善および動脈石灰化抑制に寄与
血圧低下作用:発酵乳製品に含まれるACE阻害ペプチド(VPP・IPP)の降圧効果
日本の伝統的な食文化は、米を主食とし、味噌汁・漬物・納豆・魚を組み合わせた「一汁三菜」の形式が基本です。この食事パターンは、地中海式食事法と並んで世界的に注目される健康的な食事スタイルであり、発酵食品を日常的に取り入れるという点で独自の強みを持っています。
5. 院長著書『血液と体の「あぶら」を落とすスープ』のご紹介
当院院長・五藤良将は、日々の臨床経験から得た知見をもとに、2024年5月にアスコムより『血液と体の「あぶら」を落とすスープ ── 内臓脂肪 中性脂肪 コレステロールがみるみる落ちる』を出版いたしました。発売から約2か月で3万部を突破し、Amazonの売れ筋ランキングでは「肥満・メタボリックシンドローム」カテゴリで第1位を獲得しました。朝日新聞・読売新聞にも掲載されています。

書籍のポイント
スーパーで手軽に買える食材だけで作れる「おそうじスープの素」を使った、1日1杯のスープ習慣。かつお節をベースにした旨味たっぷりのスープで、塩分控えめでも満足感のある味わいを実現。内臓脂肪・中性脂肪・LDLコレステロールにアプローチし、血管を柔らかく、血液をサラサラにすることを目指しています。
院長自身が「日常診療で伝えきれない思い」を込めて執筆した一冊です。外来で限られた時間では伝えきれない、食と健康の深い関わりについて、エビデンスを踏まえながらわかりやすく解説しています。
6. 大田区糖尿病性腎症重症化予防プログラムについて
竹内内科小児科医院は、大田区国民健康保険「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」の協力医療機関として、かかりつけ医および保健指導実施の両面で参加しております。
大田区糖尿病性腎症重症化予防プログラムとは
糖尿病で腎機能が低下している方(糖尿病性腎症第2期・第3期)を対象に、管理栄養士等による概ね6か月間・全6回の保健指導を実施するプログラムです。対象者の費用負担はなく(区が負担)、かかりつけ医と「連携パス」で情報共有しながら進めます。
目的:糖尿病性腎症による透析等の合併症の発症を防止すること
対象:大田区国民健康保険加入者のうち、糖尿病性腎症第2期(早期腎症期)および第3期(顕性腎症期)の方
糖尿病性腎症は自覚症状が乏しいまま進行し、気づいたときには透析が必要になるケースも少なくありません。早期の段階から食事(タンパク質制限・塩分管理・カリウム調整)を中心とした保健指導を行うことで、腎機能の低下速度を緩やかにし、透析導入を遅らせることが可能です。該当する方には当院から積極的にご案内しておりますので、お気軽にご相談ください。
7. 栄養指導外来のご案内
竹内内科小児科医院では、管理栄養士による専門的な栄養指導外来を定期的に実施しております。
栄養指導外来 診療概要
| 実施日 | 毎月 第2金曜日 |
| 時間 | 午前 9:00 〜 12:00 |
| 担当 | 管理栄養士 |
| 対象疾患 | 糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満症、糖尿病性腎症、その他の代謝疾患、離乳食相談 |
| 予約方法 | お電話(03-3721-5222)、WEB予約、またはLINE公式アカウントからご予約ください |
栄養指導は医師の診察とセットで行うため、検査データ(HbA1c、血糖値、脂質プロファイル、腎機能など)を踏まえた、エビデンスに基づいた個別指導が可能です。「何を食べたらいいかわからない」「ダイエットしたいけど続かない」「子どもの離乳食の進め方が不安」 ── そのようなお悩みにも、管理栄養士が丁寧にお答えします。
8. こんな方はぜひご相談ください
◆ 健康診断で血糖値・HbA1c・コレステロール・中性脂肪の異常を指摘された方
◆ 肥満・メタボリックシンドロームでダイエットに取り組みたい方
◆ 糖尿病と診断され、食事の見直しが必要な方
◆ 高血圧症で減塩食のアドバイスが欲しい方
◆ 脂質異常症(高LDLコレステロール・高中性脂肪)で食事改善を目指す方
◆ 糖尿病性腎症で腎臓を守るための食事管理が必要な方
◆ 離乳食の進め方や乳幼児の栄養についてお悩みの方
◆ 「何を食べたらいいかわからない」と漠然と不安を感じている方
「食を変えることは、人生を変えること」 ── これは決して大げさな表現ではありません。DPP研究が示したように、食事と運動への真摯な取り組みは、薬に勝る力を持っています。そしてその第一歩は、専門家に相談することから始まります。
当院は糖尿病内科として、また小児科としても、赤ちゃんからご高齢の方まで、あらゆる世代の「食と健康」を支えてまいります。お気軽にご相談ください。
竹内内科小児科医院 院長 五藤良将
(医療法人社団五良会 理事長 / 内科認定医 / 日本抗加齢医学会専門医)

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| 9:00〜12:00 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ✕ |
| 15:30〜19:00 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ✕ | ✕ |
※休診日:土曜午後・日祝日
※ご予約なしでも受診可能ですが、ご予約の方が優先となります
※主番号が繋がりにくい場合:070-9050-5103(クリニック専用携帯)
院長 五藤良将