【SmartNews掲載】「百日咳で乳児が亡くなる現実」を知っていますか?

【SmartNews+掲載記念】百日咳:赤ちゃんの命を守るために、大人と子どもが「ワクチンで盾になる」

このたび、当院理事長・五藤良将(内科医ごっち)(内科認定医・日本抗加齢医学会専門医)が医療監修を務めた百日咳に関する記事が、SmartNews+(スマートニュースプラス)に掲載されました。

2025年4月29日公開
📱SmartNewsの検索欄に「五藤良将」と入力すると、掲載記事がご覧いただけます。

🔻掲載記事(nobico/のびこ)
『生後1ヶ月の命を奪った百日咳とは? 医師が伝えたい「赤ちゃんを守るために大人が知っておくべきこと」』

▶ 記事はこちら: 生後1カ月の命を奪った百日咳とは?医師が伝えたい「赤ちゃんを守るために大人が知っておくべきこと」

この記事を通じ、私たち医療者が「百日咳の再流行」と「予防接種の重要性」を正しく伝える責務を強く感じています。以下に、医療機関としての視点から、感染症としての百日咳、当院の検査・診断体制、治療法、そしてワクチンによる予防策を詳しく解説します。

百日咳は、新生児・乳児にとって致命的となり得る感染症です。
しかし、感染源となるのはしばしば「軽症ですむ大人」。
自分自身は気づかないうちに、免疫のない赤ちゃんにうつしてしまう――
そのような悲劇を防ぐために、今まさに「知ってほしい・動いてほしい」と思い、本記事を監修しました。

【百日咳とは?】 ボルデテラ・パータスシス(Bordetella pertussis)という細菌による急性呼吸器感染症で、特に新生児・乳児で重症化・致死率が高いのが特徴です。

● 主な症状:

  • 数週間にわたり続く強い咳(スタッカート咳)
  • 吸気時に「ヒュー」という音(whoop)
  • 乳児ではwhoopが見られず、無呼吸・けいれん・チアノーゼ・突然死のリスク

● 潜伏期:7〜10日
● 感染経路:飛沫感染(非常に感染力が強い)


【当院での百日咳検査体制】

当院では、以下の2種類の検査方法に対応しています。

  1. 即日迅速抗原検査
    約10分で結果が判明します。検査キットの在庫がある場合は、迅速性の観点からこちらを優先します。
  2. 百日咳核酸検出(LAMP法)
    即日検査キットが不足している場合は、BML社のLAMP法による核酸検出検査を行います。LAMP法は等温環境下で特異的遺伝子配列を増幅することで、高感度かつ比較的短時間で結果が得られる検査です(外部委託のため報告までに2日程度かかります)。

咳が長引く症例、特に小児や乳児と接触のある成人においては、早期診断・早期隔離を行うために有用です。

【治療:抗菌薬】

百日咳の治療には、症状緩和と感染拡大防止の2つの目的があります。

● 抗菌薬(第1選択)

  • アジスロマイシン(3~5日間投与)
  • クラリスロマイシンまたはエリスロマイシン(7〜14日)
  • スルファメトキサゾール・トリメトプリム(代替薬)

● 治療効果:

  • 抗菌薬は発症から2週以内で感染性を抑制
  • 咳の軽快には数週間以上かかることも多い

● 小児重症例では:

  • 入院管理、酸素投与、抗けいれん薬、栄養管理、無呼吸モニタリングなどが必要になることあります。近隣の小児科入院できる医療機関(荏原病院など)にすぐに紹介いたします。(医療連携してます)

【予防:ワクチンによる集団免疫の確立】

日本では、DPT-IPV(4種混合)ワクチンが定期接種に含まれていますが、免疫は5〜10年で減衰します。そのため、学童期・思春期・成人期に再感染や他者への感染源となることが問題になっています。

【学童期の追加接種:日本小児科学会の提言】
公益社団法人日本小児科学会は、三種混合ワクチン(トリビック®)の追加接種を以下の2回推奨しています。
① 小学校入学前の1年間(5〜6歳)
② 中学校入学前(11〜12歳)

日本の小児定期予防接種では、DTワクチン(ジフテリア・破傷風)が上記年齢層に組み込まれています。→ 該当者には、原則として公費によるDT接種をまず優先します。小児定期予防接種法に基づく定期接種は、対象年齢の児童に対して原則として保護者に接種努力義務があるためです(予防接種法第9条)。

【当院での三種混合ワクチン(DPT)およびTdap(Boostrix®)ワクチンの接種方針】
公費DTにはP(百日咳成分)が含まれません。
→ まず、公費DTを接種し、百日咳を含むDPT(トリビック®)をご希望の場合はDT接種して28日間以上あけてDPT(Tribiq®)自費接種となります。

一般的な不活化ワクチン間の接種間隔(厚生労働省指針):最低 6日以上(中6日空ければ7日目に接種可)。ただし、DPTとDTは成分の一部が重複(ジフテリア・破傷風)しており、短期間で続けて打つと副反応(特に局所反応)が強く出るリスクがあります。米国CDCや日本小児科学会の考え方を参考にすると、安全性の観点から4週間(28日)程度間隔をあけるのが望ましいです。



【成人(大人)への百日咳の予防・ワクチンについて】

両者とも百日咳・破傷風・ジフテリアの追加免疫を目的としたブースターであり、効果に大きな差はありません。
現在、トリビック®は供給が不安定で入荷確約が困難でもあり、Tdap(Boostrix®)での対応が中心です。
Tdap(Boostrix®)成人を対象とし、世界的にも標準的に使用されている百日咳・破傷風・ジフテリア混合ワクチンです。トリビック®は副反応(発熱・局所腫脹など)が比較的強く出やすいとの報告があり、成人において、当院では副作用発現頻度の低いTdap(Boostrix®)を原則採用しています。

→ 添付資料(公式ポスター)でも「百日咳はワクチンで予防できる」と明記され、5〜15歳に多くの患者が存在する疫学グラフも掲載されています。

▶ 出典: 日本小児科学会「百日咳ワクチンの追加接種に関する提言(2019年)」


【当院での三種混合ワクチン接種体制(完全予約制)】

ワクチン名特徴対象費用(税込)
トリビック®(Tribiq®, MSD社)国内承認DPTブースター11歳以上(※5歳以上も学会推奨により医師判断で接種可)6,600円
Boostrix®(輸入Tdapワクチン)海外渡航・留学・寮生活条件に対応成人全般(特に海外渡航者)11,000円

※どちらも完全予約制です。輸入ワクチンは在庫に限りがあります。


【まとめ】 百日咳は、軽症の成人・年長児が感染源となり、免疫のない赤ちゃんへ広がる極めて危険な感染症です。だからこそ、咳が長引く際は早期診断を、そして大人と子どもの追加接種で「家族全体の免疫バリア」を築くことが何より重要です。

当院では、百日咳に対するLAMP検査、抗菌薬治療、三種混合ワクチン接種を包括的に行っております。

赤ちゃんの命を守るために、まずは私たち大人が「盾」になりましょう。

こちらのブログ【2025年4月 最新版】百日咳が異常流行中!もご参照ください。

Author: 五藤 良将