
ヒルドイドは、ヘパリン類似物質を有効成分とする処方薬の代表的な保湿剤です(製造販売:マルホ株式会社)。肝臓で作られる「ヘパリン」に似た構造を持ち、水分子を引き寄せて保持する能力により、持続的な保湿効果を発揮します。さらに、血液をかたまりにくくして血流を良くする血行促進効果や抗炎症効果も併せ持つため、乾燥肌の保湿のみならず、しもやけ・打ち身・筋肉痛・関節痛などにも効果が期待できます。
1日1回から数回、患部に適量を塗布するだけのシンプルな使い方で、赤ちゃんからご高齢の方まで幅広く処方される保湿剤です。本記事では、ヒルドイドの各製剤の違い、先発品と後発品(ジェネリック)の違い、2024年10月から導入された選定療養費制度、2026年6月の診療報酬改定による変更点、ドラッグストアで購入できるOTC医薬品、そして冬場に多い「しもやけ」への治療効果まで、詳しく解説いたします。

この記事の内容
2. 油性クリーム vs 水性クリーム ── 基剤の違いが効果を変える
4. 選定療養費制度 ── 2024年10月からの自己負担増
5. 2026年6月 診療報酬改定 ── さらなる負担増の可能性
1. ヒルドイドの4つの剤形と使い分け
ヒルドイドには4つの剤形があり、それぞれ基剤(ベース)の性質が異なります。患部の状態や部位、季節に応じて使い分けることで、より高い保湿効果が得られます。
| 製品名 | 剤形タイプ | 特徴 | おすすめの使い方 |
|---|---|---|---|
| ヒルドイドソフト軟膏 | 油中水型(W/O)クリーム | 油分が多くしっかり密着。低刺激で最も安全性が高い | 重度の乾燥肌、ひび割れ、冬季の集中保湿 |
| ヒルドイドクリーム | 水中油型(O/W)クリーム | ベタつきが少なくさっぱり。広範囲に塗りやすい | 軽度~中等度の乾燥、広範囲の保湿ケア |
| ヒルドイドローション | 乳剤性ローション | 乳液状でよく伸びる。頭皮にも使用可能 | 夏季の保湿、頭皮、広範囲への塗布 |
| ヒルドイドフォーム | 泡状スプレー | 液だれせず、空気中に飛散しない。しっとりした泡 | 背中など手が届きにくい部位、お子さまへの塗布 |
使い分けのポイント
乾燥がひどい冬場や、かかとやひじなど角質の厚い部位にはソフト軟膏が適しています。一方、夏場やベタつきが気になる場合はローションやクリームがおすすめです。お子さまの全身保湿には、泡で出てくるフォームが塗り広げやすく重宝されます。

各剤形の詳細
①ヒルドイド ソフト軟膏

ヒルドイドとして最も有名なクリーム状の製剤です。薬のベースとなる基材には油中水型(油がメインで、内部に水を含むタイプ)のクリームが用いられており、油分が多く伸びづらい製品ですが、その分患部にしっかり密着します。ヒルドイド製品の中でも一番刺激が少なくなっています。
②ヒルドイド クリーム

ソフト軟膏と同じクリーム状ですが、基材が異なります。水中油型(水がメインで、内部に油を含むタイプ)のクリームが用いられているため、ベタつきが少なくさっぱりとした使用感です。ソフト軟膏を使用して症状が軽くなった方におすすめです。
③ヒルドイド ローション

伸びやすく、塗り心地が良く、乳液のようなテクスチャーの製剤です。頭皮にも塗ることが可能です。使用感が良いといわれることが多いですが、まれに外用部位に刺激を感じる方もいらっしゃいます。
④ヒルドイド フォーム

やわらかい泡が噴出する泡状スプレーです。スプレータイプですが、液だれがなく、空気中に飛散しないのが特徴です。よく伸び、しっとりとした使用感があります。背中などの広範囲な部位におすすめです。
2. 油性クリーム vs 水性クリーム ── 基剤の違いが効果を変える
ヒルドイドの中でも特に混同されやすいのが、「ソフト軟膏」と「クリーム」の違いです。どちらもクリーム状の見た目をしていますが、基剤の構造が根本的に異なり、保湿効果や使用感に大きな差があります。
基剤構造のメカニズム
1油中水型(W/O型)= ヒルドイドソフト軟膏
油の中に水の粒子が分散した構造です。外側が油で覆われているため、皮膚表面に油膜のバリアを形成し、水分の蒸発を強力にブロックします。保湿力・密着力が高く、水に強い(洗い流されにくい)のが最大の特徴です。
2水中油型(O/W型)= ヒルドイドクリーム
水の中に油の粒子が分散した構造です。外側が水なのでさっぱりとした使用感で、ベタつきが少なく広範囲に伸ばしやすいのが特徴です。水で簡単に洗い流すことができます。
| 比較項目 | 油中水型(ソフト軟膏) | 水中油型(クリーム) |
|---|---|---|
| 基剤の構造 | 油の中に水が分散 | 水の中に油が分散 |
| 保湿力 | 高い(油膜が蒸発をブロック) | 中程度(さっぱり系) |
| 使用感 | しっとり・やや重め | さっぱり・軽い |
| 伸びやすさ | やや伸びにくい | よく伸びる |
| 耐水性 | 高い(水で落ちにくい) | 低い(水で流れやすい) |
| 適した季節 | 秋~冬 | 春~夏 |
| 適した部位 | かかと、ひじ、すね等の局所 | 腕、脚、体幹等の広範囲 |
| 刺激性 | 最も低刺激 | やや刺激あり |
処方名の注意点
ジェネリック(後発品)では、ヒルドイドソフト軟膏に相当する製品は「ヘパリン類似物質油性クリーム」、ヒルドイドクリームに相当する製品は「ヘパリン類似物質クリーム」という名称になっています。「油性クリーム」と「クリーム」は基剤が全く異なりますので、混同しないようご注意ください。
3. 先発品(ヒルドイド)とジェネリック(後発品)の違い
ヒルドイドは1954年にドイツで開発され、日本では1978年から販売されている歴史ある保湿外用剤です。特許が切れた現在、多くのジェネリック医薬品(後発品)が販売されています。
有効成分は同一、基剤に違いあり
先発品(ヒルドイド)もジェネリック(ヘパリン類似物質各種外用剤)も、有効成分は同じ「ヘパリン類似物質 0.3%」です。国が定めた品質試験(溶出試験・安定性試験等)をクリアしており、有効成分の効果自体に差はありません。
ただし、基剤(有効成分以外のベース部分)の処方は各メーカーが独自に設計するため、塗り心地・伸び・においなどの使用感に差が生じることがあります。これが「ヒルドイドの方が好き」「ジェネリックに変えたら合わなかった」という声が聞かれる理由です。
薬価の違い
薬価(国が定めた薬の公定価格)は、先発品と後発品で大きな差があります。
| 区分 | 代表的な製品名 | 薬価(1gあたり) |
|---|---|---|
| 先発品 | ヒルドイドソフト軟膏 0.3% | 18.5円 |
| 後発品 | ヘパリン類似物質油性クリーム 0.3%「日医工」等 | 4.0円 |
先発品は後発品の約4.6倍の薬価が設定されています。100gあたりに換算すると、先発品1,850円に対し後発品400円と、1,450円もの差があります。この価格差が、次のセクションで説明する「選定療養費」の対象となっています。
4. 選定療養費制度 ── 2024年10月からの自己負担増
重要なお知らせ
2024年10月より、ジェネリック(後発品)があるにもかかわらず先発品(ヒルドイド等)を希望される場合、通常の窓口負担に加えて「選定療養費」が発生するようになりました。これは東京都の乳幼児医療費助成(マル乳)・義務教育就学児医療費助成(マル子)・高校生等医療費助成(マル青)の対象者であっても同様に発生します。
選定療養費とは?
厚生労働省は、医療費適正化の一環として「長期収載品の選定療養」制度を2024年10月から導入しました。「長期収載品」とは、発売から10年以上が経過し特許が切れた先発品で、すでにジェネリック(後発品)が流通しているものを指します。
ジェネリックと同等の効果が得られるにもかかわらず、患者さんがあえて高額な先発品を希望される場合、その価格差の一定割合を保険外の自己負担(選定療養費)として患者さんに負担していただく制度です。
選定療養費の計算方法
1先発品薬価と後発品最高薬価の差額を計算
2差額の4分の1(1/4)が選定療養費の基本額(2024年10月~)
3基本額に消費税10%を上乗せ
※通常の保険診療の窓口負担(1~3割)とは別に発生します
ヒルドイド100gの場合の負担額試算
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 先発品(ヒルドイドソフト軟膏)100g | 1,850円 |
| 後発品(ヘパリン類似物質油性クリーム)100g | 400円 |
| 差額 | 1,450円 |
| 選定療養費(差額の1/4 + 消費税10%) | 約399円 |
つまり、ヒルドイドソフト軟膏を100g処方された場合、通常の窓口負担に加えて約400円が追加でかかることになります。200g以上処方されている方では、自己負担増がさらに大きくなります。
お子さまの医療費助成でも発生します
東京都のマル乳・マル子・マル青等の医療費助成を受けている方は、これまで調剤薬局での自己負担は実質ゼロでした。しかし選定療養費は保険外負担であるため、医療費助成の対象外です。お子さまの処方であっても、先発品のヒルドイドを選択される場合は選定療養費が発生します。
選定療養費が発生しない場合(例外)
以下の場合は、先発品を使用しても選定療養費は発生しません。
例外となるケース
(1)医療上の必要性がある場合 ── 後発品でアレルギーや副作用が出た、後発品では効果が不十分であるなど、医師が先発品の使用が医療上必要と判断した場合
(2)薬局に後発品の在庫がない場合 ── 後発品の供給不足により薬局で後発品を提供できない場合
(3)医師が一般名処方を行い、薬局の判断で先発品が調剤された場合
当院では一般名処方(ジェネリック医薬品を優先的に使用できる処方方法)を基本としておりますが、先発品のヒルドイドをご希望の方は、受診時にお申し出ください。その場合、薬局にて選定療養費をお支払いいただくことになります。
5. 2026年6月 診療報酬改定 ── さらなる負担増の可能性
2026年6月からの変更予定
2025年12月の中央社会保険医療協議会(中医協)総会にて、選定療養費の患者負担水準を現行の「差額の4分の1」から「差額の2分の1以上」に引き上げる方向で議論が進んでいます。2026年6月の診療報酬改定で実施される見込みです。
これは高齢化が進む日本の医療費適正化策の一環として行われるもので、中医協での議論では支払側委員が賛同を示し、反対意見はほぼ出ていない状況です。
改定後の負担額シミュレーション(ヒルドイド100g)
| 期間 | 負担割合 | 100gあたりの選定療養費(税込) |
|---|---|---|
| 2024年10月~(現行) | 差額の 1/4 | 約 399円 |
| 2026年6月~(予定) | 差額の 1/2 | 約 798円 |
改定後は、現行の約2倍の選定療養費が発生する見込みです。200gの処方では約1,600円、300gでは約2,400円の追加負担となり、特にヒルドイドを多量に処方されている方にとっては無視できない金額です。
今後の展望
中医協の議論では「いずれ後発品との差額全額が自己負担となる可能性」も示唆されています。ジェネリック医薬品への移行は今後ますます推進されていく方向にあり、先発品へのこだわりがない場合は、ジェネリックへの切り替えをご検討いただくことをお勧めいたします。使用感の違いが気になる方は、一度試していただき、合わない場合は医師にご相談ください。
6. ドラッグストアで買える!OTC(市販薬)のヘパリン類似物質
ヘパリン類似物質は2018年にOTC医薬品(市販薬)として承認され、現在では複数のメーカーからドラッグストアや薬局で購入できるようになっています。有効成分の濃度は処方薬と同じ0.3%です。
主なOTC製品一覧
| 製品名 | メーカー | 剤形 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ヒルマイルド | 健栄製薬 | クリーム / ローション / スプレー / フォーム | 最も剤形のラインナップが豊富 |
| HPクリーム / HPローション | GSK(グラクソ・スミスクライン) | 水性クリーム / ローション | さっぱりした使用感 |
| さいき(Saiki) | 小林製薬 | 治療ローション / 治療クリーム | 「治療薬」として販売、皮膚の修復を訴求 |
| アットノン EX | 小林製薬 | ジェル / クリーム | 傷あと・やけどあとの改善を訴求 |
| ビーソフテンローション | テイコクファルマケア | ローション / スプレー | 処方薬のビーソフテンと同じメーカー |
| ヘパソフトプラス | ロート製薬 | ローション / クリーム | かゆみ止め成分を配合した複合タイプ |
処方薬とOTCの使い分け
OTCは医師の処方箋なしで購入でき、軽度の乾燥肌ケアに手軽に使えるのがメリットです。一方、アトピー性皮膚炎など慢性疾患で継続的にまとまった量が必要な場合は、処方薬(ジェネリック利用)の方が保険適用で経済的です。また、しもやけや血行障害など特定の疾患治療目的では、医師の診察を受けた上での処方が適切です。症状やご使用量に応じて、お気軽にご相談ください。
7. しもやけ(凍瘡)にも効くヘパリン類似物質
冬場に手足の指や耳たぶが赤く腫れ、痛がゆくなる「しもやけ(凍瘡)」。実はヒルドイドをはじめとするヘパリン類似物質は、しもやけの治療・予防にも有効です。
しもやけはなぜ起きるのか
しもやけは、寒冷刺激によって末梢の血管が収縮と拡張を繰り返すことで血行障害が起こり、皮膚に炎症が生じる疾患です。気温5~10℃前後で日内の温度差が大きいときに発症しやすく、お子さまに多い「樽柿型(たるがきがた)」(指全体が赤紫色に腫れるタイプ)と、成人に多い「多形紅斑型(たけいこうはんがた)」(指のところどころに環状の赤い斑が出るタイプ)があります。
ヘパリン類似物質がしもやけに効くメカニズム
1血行促進作用 ── ヘパリン類似物質は血液凝固を抑制し、血流を改善します。寒冷刺激で収縮した末梢血管の血流を回復させ、組織への酸素・栄養供給を促進します。
2抗炎症作用 ── 血行障害に伴う局所の炎症反応を抑え、腫れ・発赤・痛がゆさを軽減します。
3保湿作用 ── 乾燥で荒れた皮膚バリアを修復し、ひび割れや亀裂の発生を防ぎます。しもやけに合併しやすい手荒れも同時にケアできます。
治療と予防の使い方
しもやけの治療では、ヘパリン類似物質に加えてビタミンE外用剤(ユベラ軟膏等)を併用することが一般的です。ビタミンEは末梢血管を拡張させる作用があり、ヘパリン類似物質の血行促進作用と相乗効果を発揮します。重症例ではビタミンE内服薬(ユベラ錠)を併用する場合もあります。
しもやけ予防のポイント
秋口からの予防的塗布が効果的です。しもやけは一度なると毎年繰り返す方が多いため、寒くなり始める11月頃からヘパリン類似物質を手足の指や耳たぶに毎日塗布し、末梢の血行を良い状態に保つことで発症リスクを下げることができます。また、濡れた手足はしもやけの大敵です。水仕事の後はしっかり水分を拭き取り、保湿剤を塗り直す習慣をつけましょう。
正しい塗り方と使用量の目安

手を清潔にして適量を手にとり、1日1回~2回、手のひらでこすらずにやさしく塗ってください。量が足りていないことも多いので、下記を参考にしてください。

使用上の注意

ヒルドイドには血行を促進する作用があるため、血液が固まりにくくなってしまいます。そのため、血小板減少症・血友病・紫斑病の方などは使用することができません。また、副作用はほとんどありませんが、稀に皮膚炎や発疹・発赤などの症状があらわれることがあります。副作用があらわれた場合には使用を中止し、ご相談ください。妊娠中の方もご相談ください。
9. よくあるご質問(FAQ)
乾燥肌やしもやけでお悩みの方、先発品とジェネリックの選択で迷われている方、選定療養費についてご不明な点がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。お肌の状態を診察した上で、最適な剤形・製品をご提案いたします。
竹内内科小児科医院
院長 五藤良将
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